@はじめに

うつ病は、現代のストレス社会で増加してきた病気の一つである。うつ病の患者数は年々増加傾向にあり、世界の人口の3~5%がうつ病にかかっていると言われている。あらゆる病気の中でも、ベスト5にはいる患者数の病気だ。しかし、発病率は国によって大きく違いがあり、発展途上国では少なく、先進国で多いと言うことがわかっている。それには先進国に見られる競争社会のなかで、人々がどのくらいストレスを抱えているかがが浮き彫りとなっている。また、国民性も大きな一つの要素であり、細かい性格で几帳面な日本人は、うつ病になりやすいようだ。通勤ラッシュの満員電車、将来への不安、職場や学校の人間関係、生活環境や騒音、家庭内の不和や子育てへの不安など、多くの人々が様々なストレスにさらされている。自分に合ったストレス解消法を見つけ、上手にコントロールすることが心身ともに健康な生活を送る上で課題になっている。うつ病の原因は様々だが、過剰なストレスが原因で発病する場合が多いようだ。たとえば、失業や仕事の失敗、転職、転勤、引越し、失恋やいじめなどでもうつ病が発病することがある。うつ病はどの年代でも発生しうるが、2つのピークが有るようだ。20歳台と40〜50歳台である。20歳台は子供から大人になり社会に出てその厳しさなどでからくるものだと推測され、40〜50歳台は、家庭や子供などを抱えて責任が大きなってきるところに、リストラや実力社会への変化などで過度のストレスを抱えている世代であることが影響していると思われる。うつ病の治療は、薬事治療とカウンセリングなどで行い、治療のためには、十分な休養も必要である。病気が起こった原因の場に身を置いたままにしたり、考えていては、うつ病は、いつになっても治療できない。うつ病の治療が終わり元気を取り戻しても、また、前のような環境に身を置くと、再び発病する可能性がある。発病した原因をよく考えて再び、辛い病気にならない為の対策をこうじなければいけない。自分を見つめ直し、自分にあった生活を送る事が、良いのではないだろうか。何事にも頑張りすぎは禁物である。

A選んだキーワード

「うつ病」 「JCQ

B論文要約

論文1<職場におけるストレスの評価と精神疾患の理解  中村純 坂田深一  精神治療学>

職場において精神的ストレスの影響を軽減し、精神障害や心身症を予防する活動をすることは産業保健スタッフにとって重要な課題となっている。職場のストレスの測定は、集団レベルと個人レベルの評価の双方が必要である。Job Content Questionnaire(JCQ) 日本語版、NIOSH職業性ストレス調査票、職業性ストレス簡易調査表などが開発され、これらを企業に働く集団に適応して、メンタルヘルス対策に用いられてきている。

(*JCQとは、職業性ストレスモデルに対応して仕事の要求度、仕事のコントロールの程度、上司および同僚からの支援などを評価することを目的としている。仕事の)要求度とは、仕事の忙しさや困難度を指し、その要求度に対して仕事の裁量権や自由度のバランスがどの程度コントロールできているのか、さらに」仕事をする上で上司や同僚の支援がどの程度あるかなど、「仕事の要求度―コントロール社会的支援モデル」を評価するようにした調査票である。)

しかし、臨床医から見ると個々の人にその結果を還元するための体制構築がなお不十分であり、調査票を用いた方法は依然として多くの企業では職場全体の集団ストレスの程度を明らかにする程度に留まっていると思われる。個人に対してはその状態を見るSASSなどの評価票を併用する必要があると考えられる。さらに個々の精神症状の評価を個人に還元し、治療に結びつけ、復職後のフォローアップにまで対応するには、職場の保健室の体制整備を行い、守秘義務の範囲、情報伝達の経路などを明確化して勤労者に周知させる必要がある。また、職場ストレス評価尺度やうつ病評価尺度はいずれも自記式であるという限界を考慮しておく必要もある。最近、うつ病の啓発が盛んになされて、うつ病という病そのものは認知されてきたが、適応障害や境界性人格障害、アルコール依存症など、うつ状態を呈するさまざまな病態が臨床の場で増加してきており、職場で単純にうつ病と捉えて対応できない事例が増加していると推測される。したがって、診断困難な症例や対応困難な症例については専門医との連帯が必要である。


↑職業性ストレスモデル図(論文1)

 

論文2<職場ストレスが勤労者の心身に及ぼす影響に関する研究  愛知医科大学医学部衛生学講座(主任:小林章雄教授)

日本人男性の職場ストレスと勤労者の健康との関連についてJCQ日本語版を用いて調査した。特に欧米で多くの研究が行われてきており、Karasekらが、職業性ス患危険因子や、飲酒、身体運動、睡眠、コーヒーなどの生活習慣、さらには自律神経機能を介した反応性、動脈硬化との関連に焦点をおいた検討がすすめられている。しかし、わが国の虚血性心疾患の発病率、罹患率、死亡率は欧米に比べて極めて低いレベルにあり、欧米でのこれらの知見がそのままわが国にあてはまるとは言いがたく、唯一報告されているHonoluluの日系人における調査では、両者には関連が認められなかったとしている。されに、職場ストレスは。虚血性心疾患をはじめとする循環器疾患や冠動脈疾患危険因子だけでなく、うつ病や不安などの勤労者の精神、心理、情動的側面や、欠勤、薬物依存、職場内暴力、自殺などの行動的側面にも影響し、勤労者の労働生活の質的低下、生産性の低下に結びつく要因としても重要性を増しつつある。本研究では、国際的に広く利用され、わが国において信頼性、妥当性の確認されているJob Content Questionnair(JCQ)の日本語版を用いて、職場ストレスの測定を3年の期間を繰り返し行って精度高く評価した上で勤労者の心身両面に及ぼす健康影響について検討した。その結果、職場ストレスと血清脂質には関連を認めなかった。血圧については、両者に関連は認められなかったが、これには随時血圧(casual BP)24時間血圧(ambulatory BP)を用いた研究があるが、概して24時間血圧を用いたもので、職場ストレスとの関連ありとするものが多く、随時血圧を用いた研究では否定的な報告が多い傾向にある。喫煙習慣については、職場ストレスとの関連は認められなかった。職場ストレスは喫煙本数を高めることや禁煙の抵抗因子として働くことなどが報告されている。また、冠動脈疾患危険因子と職場ストレスに関連が認められなかったのは、対象者を一職域に限定したことにより、より均質な集団が対象となるため、群間差が出にくくなったことも一因と思われる。一方、職場ストレスは、身体不活性や抑うつ症状と強く関連しており、この持続は、勤労者のメンタルヘルスを悪化させる重要な因子である。近年、日本では、肥満をはじめとする生活習慣病が増加しており、その中で運動習慣は生活習慣病予防に重要な役割を担っている。本研究の結果は、職場ストレスがあると個人の運動習慣が定着しない可能性を示している。このことは、職場での健康づくりをすすめる際に、運動習慣を持たない勤労者に対しては、個人に対して画一的に運動を促すだけでなく、その背景に職場ストレスが存在する可能性を念頭に置き、メンタルヘルスを含めたきめの細かい働きかけや、個人レベルでは対応できない職場のストレス環境の改善策を考慮する必要があることを示している。

 

 

C論文の内容とビデオの内容から、自分自身で考えたこと

現代のストレス社会にとってうつ病から働き盛りの大人を守るには,産業医などの産業保健スタッフと精神科医や心療内科医とのより緊密な連携が重要である。そのために強固なシステムが必要だが、今私たちができることは、うつ病に掛からないための一次予防を個人レベルで確認することである。それは自分にあったストレス解消法を見出し、いかに上手に使いこなすことができるか…最近、渡辺淳一著の‘鈍感力‘という本を読んだが、ストレスをためない方法としていかによい意味で鈍感になることがストレスをためない、うつ病にならないかを示している。彼はこう示している。「ひりひりと傷つき易い、鋭く敏感なものより。たいていのことではへこたれない、鈍く逞しいものこそ、現代を生き抜く力であり、知恵でもあるのです」。うつ病に掛かりやすい人は、まじめで几帳面な責任感の強い性格の人と言われており、何事にも真剣に取り組み最後までやり遂げようとし集中力や忍耐力にすぐれている人が上げられる。生涯医師として働く私たちにとって集中力や忍耐力は必要であり、学生生活の今でもかなり勉学に追い詰められることがある。しかし、それは将来医師として働くという揺ぎ無い目標があるから乗り越えられる。自分の意志で医学部の門をたたき、学校に通える恵まれた環境に生かされている。今回のレポート作成を通しそのような志をも改めて確認することができた。

Dまとめ 

職場でのメンタルストレス程度を客観的に測定し評価する方法として、大企業を中心に「心の健康診断」としてNIOSH職業性ストレス調査票やJCQなど質問紙による調査を実施する職場が見ると、個々の職場ストレスが増えているが、臨床医から見ると個々の人にその結果を還元するための体制構築がなお不十分であり、この方法は依然として集団ストレスの程度を明らかにする程度に留まっている。職場における心のリスクを減少させるには原因となる職場の環境を整える努力と個人のストレスへの対応能力を向上させる努力が必要だ。働く人の健康を守るためには、まず働く人自身が身体の健康管理と同様に心の健康管理の大切さに気づき、それぞれの人生の中での仕事のあり方を考えていくことが、今求められているのではないか。